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更新日付:2019年12月13日 / ページ番号:C065645
女性カレッジ2019「自分軸を育てる~仲間と作り上げる演劇ワークショップの経験を通して~」と題し、女性を取り巻く“当たり前”や日常を見直し、私たちが生きている社会の現状に気付くことを目標として、全10回の講座をパートナーシップさいたまで開催しました。
前半は、より自分らしい生き方を目指すため、常識や日常を立ち止まって見直し、寸劇として表現しました。後半は、セルフケアなどを学びました。
回 | 実施日 | テーマ | 講師 |
第1回 | 6月28日(金) | 学ぶ意味・参加する想いをシェアしよう | さいたま市事業コーディネーター 古川 晶子 |
第2回 | 7月5日(金) | ジェンダー総論・女性を取り巻く問題 ~テーマ別にグループを作る~ |
早稲田大学講師 熱田 敬子さん |
第3回 | 7月12日(金) | テーマ別集中講義 身体を使って演劇ワークで遊んでみよう |
早稲田大学講師 熱田 敬子さん |
第4回 | 7月19日(金) | 資料、経験をもとに話し合い、シチュエーションを練る | 早稲田大学講師 熱田 敬子さん |
第5回 | 7月26日(金) | 本番に向けたグループ練習 | 早稲田大学講師 熱田 敬子さん |
第6回 | 8月2日(金) | 寸劇発表会 | 早稲田大学講師 熱田 敬子さん |
第7回 | 8月23日(金) | 短所と向き合い自分を好きになる ~自尊感情アップ~ |
カウンセリング&サポートサービスN 髙山 直子さん |
第8回 | 8月30日(金) | ワンランク上のコミュニケーションワーク | カウンセリング&サポートサービスN 髙山 直子さん |
第9回 | 9月6日(金) | 半径1メートルのジェンダーを見つめる | 早稲田大学他非常勤講師 永山 聡子さん |
第10回 | 9月13日(金) | 全回の振り返り 寸劇の映写会・キャストを変えて再演 |
早稲田大学講師 熱田 敬子さん |
各回の内容は、講座参加者がレポートとしてまとめたものをもとに掲載しています。
【第1回】学ぶ意味・参加する想いをシェアしよう 講師:さいたま市事業コーディネーター 古川 晶子
◆講座内容◆
まず、参加者の自己紹介として、名前・参加動機や講座への期待などをお話ししていただきました。「自分軸というチラシの言葉に魅かれた」「自分自身の意識改革も含めて勉強したい」「日常の中で男性ならこういう扱いはされないだろうと感じることがある。女性を取り巻く社会について学びたい」「マタハラで退職した。家事・育児は女がするものという生きづらさを感じており、娘の代にはそのような世の中を変えたい」など、それぞれが今の想いをお話しされました。
講座中盤では、講座の各回のレポートの担当者を決めました。これはインプット(聴講)だけでなく、アウトプット(レポート)することが大切であるとのことから行うものであり、この実施報告ページの各回の講座内容のまとめについて参加者がレポートしていきます。
講座後半では、講師からの講義として、「男女共同参画」と「ジェンダー」について海外と日本のフェミニズムの流れを追いながら学びました。多様な性があることを当然とし、男らしさや女らしさではなく「自分らしさ」を大切にできる社会でありたいとお話がまとめられました。
最後に参加者の「今気になること」についての想いを共有しました。「私は○○のお母さん、△△の嫁でしかないような気がする。社会の中での自分の立場が弱いと感じる」という話に対して古川講師からライフキャリアについてのお話がありました。キャリアは「子ども」「学生」「余暇人」「市民」「職業人」「家庭人」「そのほかのさまざまな役割」の7つは分けられ、仕事をする「職業人」であることは自分のキャリアの1/7に過ぎないため、そこにだけ捉われなくて良いとのことでした。
◆受講者感想◆
・古川先生のお話を聞くのは2度目でしたが、ライフキャリアのお話は本当に好きです!救われる方、気付かされる方がたくさんいるのではないでしょうか。各回レポートの担当も頑張りたいと思います。1回目にしていろいろな方とお話できてよかったです。
・キャリアということを学んだ。ジェンダーについて学んだ。いろんな人がいるなと感じた。例えば、仕事をやめることになった女性や、今の生活は良いけれど専業主婦の自分に焦りがあって、また、負い目を感じていること、仕事を始めようと思っていること…。
【第2回】ジェンダー総論・女性を取り巻く問題~テーマ別にグループを作る~ 講師:早稲田大学講師 熱田 敬子さん
◆講座内容◆
女性を取り巻く社会的問題とジェンダーを学ぶ意義の呈示、さらにその問題を自分に引きつけて感じ表現する事の効用、及びそれを可能にする具体的な方法についての紹介などがありました。前半は、1.日常生活の中で起こるジェンダーに関する現状に気づき解決行動を起こす事の意義、2.その手法の一つである「フォーラムシアター」についての講義でした。
始めに、ジェンダーに関する現状に気づき、解決の糸口を見つける為の3段階が示されました。
第一段階:自分を振り返る段階→女性を取り巻く「当たり前」について感じているモヤモヤを見直し言葉にする
第二段階:社会の構造的な差別に気づく段階→例:公共機関はすべての人の物であるはずが、なぜベビーカーや車いすの人が(誰に言われた訳でもないのに)堂々と振る舞えず、何となく遠慮していることがあるのかについて考えること 等
第三段階:想像力を働かせて、自己と他者の痛みを繋げる段階
以上の段階を可能にするものとして、以下2つの演劇の手法が紹介されました。
1「抑圧された者たちの劇場」(アウグスト・ボアール) 2「ヴァギナ・モノローグス」(イブ・エンスラー)
後半は、「フォーラムシアター」の実例として、中国の若者達による「ヴァギナ・モノローグス」のビデオが上映されました。これは女性による女性器の語りを皆で繋げる活動で、今や中国の文化にもなり、国内十大イベントの一つであるとのことです。男子出産まで生み続ける女性、医師より外見は女性そのものだから、陰部の形成は必要ないと言われ憤る非男性(トランス女性)、公共交通機関内での集団ミニスカートパフォーマンスなど、その独白・方法は多岐にわたり、上映後は見ている私たちの心を深くえぐったとの感想が多数見受けられました。(「衝撃的、逃げ出したくなった」「発信的女性の存在は心強い」等)
私も複雑な想いを抱きながらの映写後でしたが、熱田講師の「自分の想いをありのままに表現する事」の意義と、数々の独白は「演技と言う仮面をつけての抑圧された想いの自己表現」でありそれは「疎外された個人の為の文化の形の一つ」との解説で合点がいった2時間でした。
◆受講者感想◆
・今日の中国のビデオは初めてで私にはできないことと思い、ちょっと引きましたがその後の、周囲の人との話し合いは(内容理解の)参考になりました。
・(熱田講師は)さすがジェンダーのスペシャリストでいらっしゃるなと思いました。これまで言葉に出来なかったモヤモヤについて、ズバッと解説してくださり、頭の中がパーッと明るくなるような気がしました。
・映画の内容は衝撃的でしたが、同時にそれは自分の中の抑圧がいかに強いものかと連動していると思いました。私たちが意識・無意識的に目を逸らし、問題視する事もできなかった事について、再度向き合う為のきっかけ作りとしては、非常に有意義なのではないかと思います。「あたりまえの事をあたりまえに行う事」の困難さと重要性を再確認した時間でした。
【第3回】テーマ別集中講義 身体を使って演劇ワークで遊んでみよう 講師:早稲田大学講師 熱田 敬子さん
◆講座内容◆
2時間にわたり、寸劇を演じる際に必要な要素やテクニックを全身を使い実践しました。
1.導入
歩きながらアイコンタクトを取る、表情から詳細な感情を読み取る、「エア」ボール投げ、脱力等を行い、演じることに慣れていきました。
2.冒頭と締め括りのセリフを決めて演じる
数名で、決められた冒頭のセリフから始め、締め括りのセリフに辿り着く展開ができるようワークを行いました。
シチュエーション:慌てて新幹線に乗り、寝ている隣の人に行き先を聞く
冒頭のセリフ:お隣良いですか?
締め括りのセリフ:ところでこの新幹線、名古屋まで行きますか?
3.「最近言いたかったが言えなかったこと」をテーマに即興劇を演じる
参加者が「最近言いたかったが言えなかったこと(「もやもや」したこと)」をテーマにし、即興劇を演じました。
実際に「もやもや」を経験した参加者の話を元にシチュエーションや登場人物を定めて再現した後に演者を変えながら、どうしたら「もやもや」しないのか、解決するのかを皆で考えました。
◆受講者感想◆
・演劇ワークって一体どんなものだろう?とイメージなく臨んだが、非常に楽しいものだった。しかし冒頭、締め括りのセリフを決めて演じるワークでは、どうも不自然な流れでしか演じられず、難しさを感じた。
・熱田先生の講義の中でフォーラムシアター形式をとるのは、実際に体感しないとわからないことばかりだ、という話があったが、体感してみて非常に納得した。(例:DVやモラハラを受けている女性に「そんな男と早く別れなよ!私だったらすぐ別れる!」と言う人がいるが、暴力を目の前で振るわれたらそんなこと簡単にできない。)現実で変えたいことがある時は、このような手法もあるのか!と自身の引き出しが増えた。
【第4回】資料、経験をもとに話し合い、シチュエーションを練る 講師:早稲田大学講師 熱田 敬子さん
◆講座内容◆
講座前半では、「ララミープロジェクト」「ヘイトクライム」の話を元に、「ジェノサイド」「ホロコースト」について話しました。
講座中盤では、「リプロダクティブヘルスライツ(産む、産まない、産めない)」「DV、虐待(家の中の暴力)」「働く(労働)」「セクシュアリティ(LGBT)」について詳しく聞きました。
講座後半では、中盤で聞いた話を元に、自分が希望するグループに分かれ、一人ひとり自分の話をグループ内で共有しました。
最後に、宿題として「次回までに調べてくること」「役割」「シチュエーション」「始めと終わり」「考えたいこと」をグループ内で決めることになりました。
◆受講者感想◆
・ララミープロジェクトの話を聞いて、小さな町の心の底にたまっていた偏見が大きな差別の事件に繋がっていくことを感じ、日頃の我慢などを開放するためにもこういう講座が必要だなと思いました。
【第5回】本番に向けたグループ練習 講師:早稲田大学講師 熱田 敬子さん
◆講座内容◆
テーマごとのグループに分かれて本番に向けたグループ練習として寸劇の登場人物と設定(シチュエーション)を決めました。各自テーマについて調べてきた情報を交換し、その後、仮の設定で一度寸劇を行いました。この講座ではエチュードという方法で、脚本を作らずに寸劇を行っています。それは、毎回欠席の方が必ず出るため、役の変更や交換ができるようにするためです。
次に、寸劇発表会で実際に演じる登場人物とシチュエーションについて話し合って決めていきました。話しながら思いついたことはホワイトボードに書き込み、寸劇の案を練りこみ、実際に寸劇を行ってみます。すると、このシチュエーションは使いやすいがこれは使いにくいなどあり、なかなか苦戦していました。講師からアドバイスをいただいたり試したりを繰り返し、練習していきました。
◆受講者感想◆
・一人の女性を巡る葛藤には、様々な人物の様々な思惑が交錯していることを再認識できた1時間でした。即興の持つ力は絶大です。
・自分の中から自然に湧き上がってくるものがより良い形で表現できれば皆さんにも伝わるかなという思いでトライしてみました。共感できることもあって自然にお互いを知ることができて良かったです。
【第6回】寸劇発表会 講師:早稲田大学講師 熱田 敬子さん
◆講座内容◆
4つのグループに分かれ、テーマに沿って考えた寸劇の発表をした。発表後、グループをシャッフルし、感想を話し合いました。
〔寸劇〕
1.【働く】
出演…上司(男性)、妊娠した女性社員、独身女性社員
妊娠した女性社員がつわりのため仕事が進まない。
●会社(男性目線)の対応としては、独身者、子のない社員がワーキングママの代償となる存在としてみている。
2.【産む・産まない】
出演…上司(男性)、女性社員数名、夫
職場で、子を産んだ女性、不妊治療中の女性、未婚(産まない選択)の女性
それぞれの心の声を表現。
また、家事は労働には当たらないのかを問う。
●同じ女性でもそれぞれ、感じ方・考え方・思いは違う。
3.【セクシャリティ】
出演…トランスジェンダーの娘とその両親
幼少期、学童期、思春期へと成長しながらその時々の子の気持ちを表現し、思春期に両親にカミングアウトする。
●子ども本人の葛藤、父と母の受け止め方の違いを表現。
4.【虐待】
出演…父、母、長女、次女
夫婦喧嘩ののち、次女だけ連れて母親が出ていく。
●父母の言い争う様子を見る子どもたちの恐怖感、一人残される長女の孤独感を表現。
〔講師より〕
1.パワハラ
男性から見た常識が職場・社会の常識だと考えられがち。
2.産む・産まない
女性同士でも本音はなかなか言えない。
3.LGBT
現実として、‘鈴木さん、佐藤さん’くらい世の中には大勢いる。父親はこの悩みをよく理解できず、母親との温度差が顕著になりがち。
4.虐待
直接子どもに手をあげなくても夫婦喧嘩を眼前で見せることも虐待となる。夫婦間のみならず家庭の問題となる。
*それぞれ場面やテーマは違っても、問題は各々がつながっている。
◆受講者感想◆
・劇を演じること、観ることで、それぞれの立場に自分を置き換えて考えることができた。
・自分では直接言えないようなことも、役者として代弁することができた。
・LGBTは自分事と捉えたことがなかったが、身近に大勢いる事実をきいて驚いた。
・虐待は、記憶が閉じ込められる、根深い問題だと感じた。
・日頃、当たり前のこととして問題視せずに過ごしていたが、誰の視点で社会が動いているのか、考えるきっかけになった。
【第7回】短所と向き合い自分を好きになる~自尊感情アップ~ 講師:カウンセリング&サポートサービスN 髙山 直子さん
◆講座内容◆
カウンセラーの髙山さんを講師にお迎えし、講座が始まりました。まず、「Your Bill of Rights(権利章典)」を声に出して読み、自分の心に響いた権利を1つ選びました。講師からは、自分が選んだものは今の自分に必要なものかもしれないと考えることには意味があると伝えられました。
「女性」をキーワードに話すと、他人をケアする役割を担うと社会や周りから期待されているところがあり、自分もそうであると思い込み自分を縛ってしまう。他人の問題を自分の問題として抱え込んでしまう。そのため、他者との境界を引いていくことが大切である。人は知識をつけるだけでは行動は変わらず、意識化することで初めて行動が変わることから、グループの持つ力を使って意識化していく作業を行うと説明されました。
「短所を長所に置き換える」という自尊感情を上げるワークを行うが、そのプロセスにはコミュニケーションの要素が入ってくるとのことです。この「コミュニケーション」が大事な要素となり、「他人の話を聞く」「自分の考えを伝える」という2つの作業があります。他の人が自分の短所について話したら、勝手に推測して思い込まずに質問しながらしっかりと聞く。聞いた上で、短所を長所に置き換えてフィードバックする。自分はどう思ったかを「伝える」コミュニケーションを意識することが大切とお話され、ワークを行いました。ワークの途中では、人の話を聞くときのポイントについて説明され、実践していきました。ワーク終了後、参加者からは、「短所の話をしている場なのにグループで話すと楽しく話せて驚いた」などの声があがりました。
最後に、「他人から見た自分の印象」を知るため、自分の背中にシートを貼り、他の参加者から自分のポジティブな印象について書いてもらい、最後に背中からシートをはがして自分で読みました。講師からは、日頃は外からの色々な言葉に振り回されているが、その外の雑音を信じるか、それとも今背中に書き込まれた嘘偽りのない言葉を信じるかは自分で選ぶことができると伝えられました。
◆受講者感想◆
・自分の短所を人に話し、それについて皆さんからの話を聞くうち“~あるべき”と自分で作った自分像から解放され、価値基準が変わった。楽しいワークだった。
・短所というとウッ…となりがちですが、こんなに楽しくできるなんて思いもしませんでした。なかなか自尊感情が高くなかったので、なんだか心が元気になって帰ることができます。
【第8回】ワンランク上のコミュニケーションワーク 講師:カウンセリング&サポートサービスN 髙山 直子さん
◆講座内容◆
講師の高山先生のパワーポイントを使った講義と演習でした。
始めに講義での約束として、1.ドアを出たらここで聞いたことは話さない 2.どこまで話すか自分でコントロールする とのお話がありました。また、第8回のテーマ「ワンランク上のコミュニケーションワーク」の「ワンランク上」とは、「相手に耳をふさがないで聞いてもらえる」という意味とのことでした。
まず、ワークとして、誰かに伝えたかったけれど上手く伝えられなかったことをグループ毎に1人ずつ再現し、その後、「肯定的に話すスキルのポイント」の講義が始まりました。意思疎通を妨害する言葉や言い回し、「受け止める」と「受け入れる」の違いについて習いました。言い方によって防御的姿勢や反論を誘発する。人は感情で動くのであって、理屈では動かない。正論は相手の感情的な対抗を引き出してしまうとのことでした。
次に、アドバイスの落とし穴についての話がありました。良かれと思っていてもアドバイスは落とし穴が多いので、情報提供に留め、本人が判断し選択出来るようにするのが良いとのことでした。
その他に、個人と問題を分けるという話や、3つの表現パターンなどを習いました。3つの表現パターンの中で良い表現、アサーティブ(自分を優先するが他者にも配慮する、I’mOK,You'reOK)なコミュニケーションについては、演習を交えて学習しました。アサーティブで大切なのはアイ・メッセージ(「アイ」=eyeとI)で話すことで、できるだけ目を見て話すこと、私を主語にして話すことだと言うことでした。
最後に、ここまでで学習した肯定的な話し方のポイントを踏まえ、始めにやったワーク、「上手く伝えられなかったこと」を上手く伝えられるような台詞に考え直してグループ毎に実践しました。
◆受講者感想◆
・主語を自分にすることで、こんなにも印象が変わることに驚きました。正論では相手に聞いてもらえない等、目から鱗が落ちるようなことをたくさん学びました。
・同じことを伝えるにも、伝え方ひとつで相手の受け止め方が全く変わってくることに驚きました。これからは話す時、言葉の選び方に気を付けたいと思いました。
【第9回】半径1メートルのジェンダーを見つめる 講師:早稲田大学他非常勤講師 永山 聡子さん
◆講座内容◆
まず講師自身がご自分の紹介をされました。大学でジェンダー論を研究されている方にとって常勤の仕事は少ないので、非正規職(大学の非常勤講師)をかけもちでたくさんされているとのことでした。20分くらいかけてご自分のことを詳しくお話しされたのは、そのとき言及されたフランスの社会学者ピエール・ブルデューの「語らなければかわらない」ということを実践されていたようにも思われました。
その後3~4名の4つのグループに分かれ、4色の付箋に男であって(女であって)得なこと損なことについてそれぞれ書き出し、模造紙を4つに区切り貼っていく作業をしました。
これまでの人生でどのようなことで損をし、得をしたかという経験をエピソードとして書き出し分類していくという作業です。具体的な経験がたくさん書き出せれば、その後のグループでの話し合いも盛り上がるようです。女性であって得なことというのは、よく考えれば実はあまり得ではないことが多いような気がして、あまり書き出す気になれませんでした。また男性であって得なことというのも、羨ましい部分がある反面、損なことであるとも感じられ、うまく分類ができませんでした。例えば女性はそもそもあまり学業や仕事でレベルの高いことが求められないので、たいしたレベルでなくても褒められることが多い。男性は社会的・経済的に大きな責任を負わされることが多いが、大きなことをしようとしても足を引っ張られることが少ないなど。
またジェンダー以外の要素もからんでくる場合があります。女性は男性を傷つけないように気を使わなければならないが、逆はしてもらえないという意見が出ました。私はむしろ男性の課長に対してよりも、女性の課長に気を遣うのが大変だと思っていました。同じ女性であっても社会的立場が異なると対応が難しいと感じていました。管理的立場に立つのは男性であるのが一般的であるので、女性であり管理職の方に対しては従来とは別の対応の仕方が必要であるからだと、グループ内でご指摘いただきました。そのように考えるとこれもジェンダーの問題に収斂できますが。各グループから代表者が1名どんな意見が出されたかということを発表し、講師がコメントされました。
最後に「労働とジェンダー なぜ、働きづらいのか?」というレジュメを配られ、載っている統計データなどについて解説されました。確かこのレジュメは講義の最初に配られてはいなかったので、この日の講義が女性の労働を対象としていたとはそれまで意識していませんでした。むしろ生活の中でのジェンダーについての講義だと思っていました。ですが自分の属する家庭の外での賃金労働をも視野に入れなければ(家庭内の労働だけでは)女性の生きづらさは軽減されないと感じました。
◆受講者感想◆
・ワークブックの作業を行う前に「自己を語れ」。自分の事を語らなければ差別は変わらない。差別を伝えていかないと変わらないし、見つからないという言葉がとても印象的でした。女性の考えや感情を表に出す事は好ましくないとされて、言われるがままに生きてきた世代としては新しい発見でもありました。作業をしながら、女性・男性の損・得では、得が意外と損だったりと表には裏があったりで、もっと深く考えてみるとその奥に自分の自尊心に関わる大切な事があるのかもしれないと思いました。自分の問題と自分の問題ではないもの、それを自分で全部抱えていたのかもしれません。自分を見つめなおすいい機会でもありました。
【第10回】全回の振り返り 寸劇の映写会・キャストを変えて再演 講師:早稲田大学講師 熱田 敬子さん
◆講座内容◆
最初に事業コーディネーターの古川晶子さんによる、1~9回の振り返りがありました。その後、熱田敬子さんによる、2回から4回に渡って寸劇の上映会と、「その状況を変えるためにはどうすればいいか」を話し合いました。
■テーマ「働く」を上映
【悪阻のため「暫く休みたい」と申し出たが、上司の圧力により仕事を辞めざるを得なかったAさん】
・女性たちが横暴な上司の態度を受け入れてしまうのはなぜだろう。
・上司は上からの圧力と仕事量の多さに疲弊し、部下の女性社員に甘えている。
(状況を変えるためには)第三者の発言力がある人が、客観的な感想として「理不尽だと感じた」と上司に伝える。
(状況を変えるためには)女性社員が団結する。
(状況を変えるためには)対上司ではなく、上司をも巻き込んで団結し、対組織と戦う。
【実際に演じてみよう~ Aさんと女性社員が団結する】
・女性社員が団結することにより、上司はしどろもどろになった。
・団結されると圧が違う。女性社員たちが「結婚おめでとう」と盛り上がられると上司は責めにくくなる。
【専業主婦になったAさんは夫に働きたいと相談するが反対されてしまう】
・Aさんは専業主婦より賃金労働している夫のほうが偉いという価値観から抜け出せない、夫がキレるのが怖いため強く言えない
(状況を変えるためには)Aさんが家出をして家事の大変さに気づいてもらう。
(状況を変えるためには)働きたいと相談するのではなく、仕事を見つけてきて「働くから」と報告する。
【実際に演じてみよう~ Aさんは仕事先を見つけてから、夫に報告する】
・夫に反対されたが、仕事先を見つけているという状況からか終始強気な態度で、家事の分断を交渉した。
■テーマ「産む・産まない」を上映
【Bさんは産後、職場に赤ちゃんを見せに来た。Bさんの赤ちゃんを絶賛する女性たちと嬉しそうなBさん。しかし言葉とは裏腹にそれぞれの心の中では様々な思いが渦巻いている】
・客観的に見ると思っていることを言えばいいのにと思うが、デリケートな問題なのでそう簡単じゃない。
(状況を変えるためには)場の空気が壊れるのは怖いが、自分の言い方で本音を言ってみる。
【実際に演じてみよう~ Bさんに、子どもを産みたくない女性社員Cさんが本音で話す】
・自分が本音を言ったことで、相手の本音も受け止められた。
・本音を言うともっと場が凍って大変なことになると思っていたけど、本音を言っても意外と場は壊れないのかも。
■テーマ「LGBT」を上映
【幼いころから自分の体が女性であることに違和感を持つDさんが、卒業式にスカートを履きたくないと両親に訴えるが、一時の気の迷いだと反対されてしまう】
・他人の子のLGBTは受け入れられる人でも、自分の子どもだと受け入れられないことがある。
・日本人は専門家に相談する人が少ない。知識のない学校の先生や両親に相談し、傷つけられてしまう。
・自らネットで調べるのも危険。劇の子は自分で「LGBT」にたどり着いたが、「変人」という言葉にたどり着いてしまう事もある。
・学校の先生をされている方は、教科書に「男性は女性を好きになる」という表現があると「そうでない場合もある」と一言付け加えるようにしているが、全員が同じように理解するわけではない。
・小学校の頃に「人の数だけ性別がある」という価値観を知りたかった。
・教育計画の延長線上に性教育があるので、先生の判断で性教育の授業だけを変えるのは難しい。
■テーマ「虐待」を上映
【夫婦喧嘩の横で怯える姉妹。父が怒って家を出た後、母も妹だけを連れて家を出てしまう。一人残され泣き叫ぶ幼い姉。】
・母親は夫婦喧嘩に必死になっていると子どもが全く見えなくなる。妹は誰かが世話をしないといけない年齢なので連れて出たが、姉は一人でできることが多いので置いて行った。
・姉は父親が好きだったから、母親はそれを知っていて、自分だけ置いて行ったのではと感じていた。
・毎日夫婦喧嘩を見せられるのは子どもにとってもの凄いストレス。将来に渡って心の傷になる。
・劇では姉は妹を守っていたが、自分一人だけ置いていかれたら姉妹の中も悪くなりそう。・家の中で暴れまわる父親は相当な体力を使っている。演じることで自分との違いをより強く実感した。
◆受講者感想◆
「働く」「産む・産まない」「LGBT」「虐待」、様々な状況で自分を殺して生きている人たち。「その人たちが状況を変えるためにはどうすればいいか」を話し合って、一貫して感じたのは、本人だけの力で状況を変えるのは難しく、第三者の介入や周りの関心・援助が必要だという事です。
ニュースやネットを通して入ってきた情報に対しては「もっと○○すればよかったのに、私だったらそうはならない」という気持ちがありました。しかし、演劇を通すと、その状況はいろんなことが複雑に絡み合ってできていることが何となく見えてきます。そしてその被害者や加害者と自分が重なることを感じて、「これは他人の話ではない。私のことだ。」と思うのです。「私のことだ」と思えて初めて真剣に考えることができる。加害者も被害者も他人ではないと実感できた経験は、これまでの私の考え方を大きく変えました。
演じることは、読んだり見たり聞いたりするより、はるかに情報量が多い経験だと思います。言語化できない感覚や感情まで味わうことができるからです。それは誰のフィルターも通さない、私だけの状況の理解です。その理解をその場にいる人と共有し、違いを確認することも、また貴重な経験です。
また、演劇をすると自分が分からなくなります。自分が嫌いとする人間を簡単に演じられてしまうからです。そして、私はなろうと思えばこういう人間になれるのだ、と恐ろしくなります。だからこそ、自分は不確かな存在であることを自覚し、自分自身で「こうありたい自分」を見つけ、その姿をあきらめてはいけないと感じました。
市民局/人権政策・男女共同参画課/男女共同参画推進センター
電話番号:048-643-5816 ファックス:048-643-5801
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